お久しぶりです。気がつけば3ヶ月も更新しておりませんでした、能勢です。
まだまだ暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、今日はいつか書こうと思いつつずっと重い腰が上がらなかったU24の世界大会についてのレポート記事です。
すでに大会が終わってから2ヶ月ちょっとちょっと経ってしまっていますが、当時のことを思い出しながら書いてみます。ただの個人的なレポートなので誰かにとってプラスになるような話ではないかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。
コーチとしての初めての世界大会「WU24UC」
2023年7月2日〜8日までイギリスのノッティンガムにて「世界U24アルティメット選手権大会(WU24UC)」が行われ、オープン部門のコーチとしてチームに帯同してきました。
自分自身昨年まで選手として活動していたので、選手以外の立場で世界大会に行くことは初めての経験でした。
そしてそれは想像していたよりも辛く、しんどい経験でした。
コーチという立場がどれだけ負担のあることなのか、身にしみて痛感させられた1週間でした。
選手の方がどんなに楽だろうと何度思ったことでしょう。
ただ、誰にでもできる経験ではないですし、自分にとって貴重な経験であったことは間違いありません。
大会からかなり時間が経ってしまっていますが、振り返ってみたいと思います。
コーチとして自身の役割
今回、WU24UCでは監督をサポートするコーチとしてチームに帯同することとなりました。
私の主な役割としては、「ディフェンスチームへのアドバイス」と「ディフェンスメンバーの人選」という感じでした。
ディフェンスメンバーの中には、チームに対して主張をしっかりできる人間もいたので、あまり自分からこうやってということは言わずに、本人たちが決めたことをサポートしていくという方向性で進めていこうと合宿を通して考えていました。(今やってるAパターンもあるけどBパターンもあるよ、みたいな感じ)
ただ、世界大会では自分たちがやってきたことを崩してでも相手に対応していくことも必要です。
その辺の対応力を鍛える場というのが少し足りなかったかなと感じています。
ディフェンスチームへのアドバイス
大きな役割としてディフェンスチームへのアドバイスがありました。
これは、「相手がこう攻めてきているからこのディフェンスをしよう」とか、「一回ゾーンを挟んで次のマンツーマンで勝負しよう」というような戦術的なところを、ディフェンスメンバーの主軸となる選手と会話しながら進めていきました。
ただ、世界大会にはトラブルは付き物で、初戦で1人、3試合目のアップ中に1人、ディフェンスの中核となっていた選手が怪我により離脱することになりました。
残っているメンバーでやるしかないので、その中のメンバーで何ができるのか、どういうメンバー構成ならうまくいくのか、考えながら進めていくのはかなり大変な作業でした。
自分の感覚を信じるか、選手の感覚を信じるか
アドバイスをする上で、コーチの立場として悩んだことは「自分の感覚」を信じるか、「選手の感覚」を信じるかということです。
あくまでもコーチという立場だと客観的には見れているけど、実際にプレーして相手を肌で感じている訳ではないので、自分がこのディフェンスが良いと思っていても、メンバーの方からこっちの方が良いという意見が出ることもありました。
そういったときは、選手の意見を尊重しつつ、自分たちがやりたいようにさせることが多かったのですが、これがよかったのかどうかは正直いってわかりません。
自分も2010年から12年間世界と対峙してきた感覚というものもあるので、その辺の葛藤もありました。
ただ、プレーするのはあくまでも選手なので、選手の意見も尊重しなければ本人たちも納得しないだろうなぁと思いました。
ディフェンスメンバーの人選
そしてもう一つの大きな役割として、ディフェンスメンバーの人選というものがありました。
ディフェンスターンの時に、どのメンバーで何をするかということを決めていく作業です。
個人的にはこれがかなり精神的にしんどい部分でした。
選ばれたメンバーは26人いて、オフェンスで7人出ると残ったメンバーは19人います。その中から次にディフェンスで出る7人を選ぶ必要あります。
7人を選ぶということは残りの12人は出れないということです。
ある程度セット等は決まっていましたが、不測の事態(主軸メンバーの離脱)などに左右されながら人選をしていました。
メンバーの考えとのズレ
大会の中盤、監督コーチ陣とメンバーの間に意見のズレがあるという話が上がりました。
正直これはどんなチームでもなくはない話ですが、ないに越したことはありません。
残念ながらオープン代表ではその問題が浮き彫りになって、チームが分裂状態にありました。
そんな中で、日本代表強化本部の和田さんがミーティングに参加してくれて、「今の状態では良くない。選手は選手として監督コーチの決めたことに対して全力で取り組み結果を出して欲しい。戦術や人選は首脳陣でやるから、出たセットでしっかり結果を出すのが選手の役割」という話をしてくださって、そこからチーム全体が自分のやるべきことに集中してくれるようになりました。
人選する際も、自分1人で決めるのではなく、メンバーからの意見も取り入れながら決めるようにしていきました。
途中から参加のツケ
少し言い訳にはなりますが、このメンバー間とのズレは自分がチームとしては途中からの参加になったことも要因であると考えています。
チーム事情で仕方がないことですが、もしチームが始まる最初の選考会段階からメンバーのことを見てコミュニケーションをしっかり取れていればそういった信頼関係も構築できたのかなと思います。
私が参加できた合宿も4回しかありませんでした。
また、合宿の中でも夜のミーティングなどで選手と一緒にビデオを見たりという時間を取れなかったのが、コミュニケーション不足を生んだ原因になってしまったと反省しています。
今後こういった立場になる方には、合宿の中で監督コーチと選手間の溝を大会までにどれだけ埋められるかということが意外と大事だと伝えられればと思います。
4ハンドラーという選択
今大会ディフェンスメンバーは基本的にハンドラー4人・ミドル3人という4ハンドラーというメンバー構成で戦いました。
一つの要因としては早々に怪我であえなく戦線離脱したディフェンスの中核メンバーがミドルであったことがあります。
また大会中、ノッティンガムではほぼ毎日ある程度の風が吹いていました。
そこでターンオーバー後にミドルで縦の勝負を仕掛けていくよりも、ハンドラーの上がりのプレーなどを中心に攻めていく方がブレイク率は上がりそうと考えたからです。
ディフェンスメンバーのハンドラー陣はディフェンスもしっかりできて、ターンオーバー後も走れてスローも安定している選手が多かったので、この選択に迷いはありませんでした。
いつも通りを崩してでも相手や環境に対応していくことが、世界大会では求められるのです。
トーナメントに向けていかに疲労を分散できるか
世界大会は1週間で10試合ほどあり、長丁場の戦いになります。毎日1試合か2試合をこなし、相手の強さもまちまちです。
オープン部門では、試合の中で誰がいつどのセットで出ていたかのスタッツシートをつけていて、その試合の出場ターン数がわかるようにしていました。
その試合に勝つことも大事ですが、トーナメントに入ってから主軸となるメンバーが疲弊してしまってパワーを発揮できないということでは世界のトップは取れません。
2nd DFの位置にいるようなメンバーの働きも、大会の中ではかなり重要な役割を果たしていきます。
必ずしも1st DFが結果を出すわけではない
今大会でも顕著にあったのが、1st DFばっかりが結果を出しているわけでもないということ。
1stメンバーを外した2nd DFメンバーや、ゾーンメンバーでもターンオーバーが起きるときは起きるし、そのメンバーでもブレイクすることはあります。
自分自身過去の経験でも何度も何度もそんな経験をしてきました。
「1stディフェンスでターンオーバーが起きないのに、なんでこんなメンバーでターンオーバーが起きるの?しかもブレイクしちゃった」
みたいなことは幾度もありました。
ここを理解してもらうのも少し苦労しました笑(和田さんのおかげ)
長丁場の世界大会では、1stセットばっかり出しても疲れが出て本領発揮できないし、うまく休ませながら全体が100%を発揮するためにはどうしたら良いかということも考えなければならないと思っています。
大会の最後の試合ではブレイクできない1stセットに対して、2ndのメンバーやゾーンメンバーがしっかり結果を出すシーンが印象的でした。
これはやはり1st DFに入っていたメンバーの方が、大会通して出場回数が多く疲労が溜まっていて結果的に最後パフォーマンスがよかったのは、それまで疲労が溜まっていない2ndのメンバーだったということに他ならないと思います。
ただ、勝ちにこだわらなければいけない試合はもちろん主力をつぎ込んでの総力戦になるので、この辺は判断が難しいところだろうなぁと思いました。
コーチは2人欲しい
これは完全に個人的な意見なんですが、コーチは2人必要だと感じました。
オープン部門は現地では、監督1人、コーチ1人、マネージャー1人、トレーナー1人、学生トレーナー1人、サポートメンバー1人というサポート体制でした。
このうち戦術や人選に関われる人は監督コーチのみでした。
自分自身ディフェンスメンバーの人選を中心にやっていたのですが、次に誰を出すか考えている間にすぐに試合の状況が変わったりすることもあり、試合を客観視することができない場面が多々ありました。
そこでコーチ的な役割を担える人がもう1人いたら、役割分担することができて、より各人が力を発揮できたんじゃないかと思いました。
私が慣れてなかったということもありますが、もう1人アルティメットがわかる人間が現地にいてくれればということを何度も思いました。
これはもちろん協会側の金銭的な問題(選手負担が増えてしまう)もあるので、難しいところではありますが、ぜひ検討してほしい問題です。
オフェンスセットが成長した
オフェンスセットのメンバーはかなり苦しい思いをしたと思います。
何より国内で自分たちの形を見出せず、安定感も生まれないまま本大会に突入しました。
そんな中でも一つずつ試合を重ねるごとに成長していき、もちろん本人たちが満足いくまでの結果ではなかったかもしれませんが、国内の状態から考えると立派な結果を出していたと思います。
精神的にかなりきつい状態での大会入りだったと思いますが、しっかりと大会で成長してゲームをなんとか作ってくれたオフェンスメンバーには尊敬しかありません。
アメリカは頭一つ抜けている
今大会で一つだけ悔いが残っているのは、U24のメンバーにアメリカ戦を経験させてあげられなかったことです。
特に「本気になったアメリカ」と対峙する経験というのは、おそらく世界大会の準決勝ぐらいからじゃないとできないと思っています。
今回リーグもアメリカと逆山で、その後のトーナメントでもアメリカと当たる機会はありませんでした。
今回のオープン代表のメンバーが世界大会には行ったけど、最強アメリカと試合ができてないのはとても残念で、世界一がどれだけ遠いところにあるかを体験できてない、決勝を見ることでしか感じられていないということは少し残念です。
アメリカ以外は横並びか
日本は今回5位という結果でした。
ただ、2位のベルギーや4位のイタリアに1点差ということを考えると、メダルを取れる可能性は十分にあったと思います。
こちらの印象としても、アメリカは一つあまた抜けていて、それ以外のベルギー、ドイツ、イタリア、日本、カナダ、オーストラリア、イギリスあたりのベスト8までの国は、ほぼ横並びという状況だと思っています。
近年ベルギーやイタリアの台頭が目立っていて(オープンだけだけど)今大会でもこのふたつを落としたことで日本はメダル圏内から順位を下げました。
この中で一つ抜きん出ることができなければ、オープン部門での世界一など到底遠い話になってしまう気がしてなりません。
なかなかに厳しい目標ですが、自分自身にできることを一つずつやって日本のアルティメット競技力向上に少しでも役に立てればなと改めて思います。
機会があればまた
大会の前半では人選の大変さなども相まって正直「もう二度とやりたくない」とすら思いました。
ただ、大会が終わった後に和田さんと話した中で、「また他の人がやることになると一から。同じ苦労を味わうことになる。」という話を聞いて、本当にそうだなぁと思いつつ、もし機会があれば引き受けて今度は合宿から選手との関係作りをしっかりとやりたいと思いました。
大会後に2年後にチャンスのある選手が「次もやってください」と言ってくれたことで、かなり救われました。
もし2年後にお声がかかるようなことがあれば、また挑戦してみようと思います。
ブロンコも頑張ります笑
まとめ
とにかくしんどかったが、貴重な経験となりました。
今回オープン部門では、選手の主体性を信じてやっていった印象がありますが、もっと監督コーチがしっかりと舵をとって動かした方がよかったのかなぁと思っています。
U24代表といえど、ほとんどの選手はアルティメット歴でいうと3〜5年の選手。
もっと監督コーチが主体的にやっていっても良い世代なのかなと感じました。
それはまた次回、この反省を活かす機会があれば実践していこうと思います。
今回の経験をしたメンバーから次のA代表に選ばれ、また世界に挑戦してくれることを願っています。
またいつか一緒に世界大会行けるといいね。
各位、大学選手権がんばってね。
ではまた。
TK DRIVE!!!!