2020年WFDFアルティメット公式ルールの変更点解説(後編)
こんにちは、バズバレッツの雷人です。
昨日に引き続きルール変更の後編です。(前半部分は前編と同様となっています。)
この記事を読むことで少しでもルールに興味を持ったり、少しずつでも理解が深まる方が増えてくれれば幸いです。
メールの内容としては
フライングディスク競技 公式ルール更新について
2020年1月1日にWFDF世界フライングディスク連盟より、「2017年発行WFDFアルティメット公式ルール 付帯資料v4.0」がリリースされました。上記に伴い、当協会にて日本語訳版を公開しましたのでご確認ください。
日本フライングディスク協会からのメールより抜粋
といった内容でした。
主な変更点
今回のルール改定の主要な部分についてメール本文と添付資料の「WFDFアルティメット公式ルール付帯資料v4.0」の日本語訳v1.0の公表について(SOTG委員会通知 2020-05号)には以下のように書かれています。
この中でも赤ラインを引いた部分の特にプレイヤーにとって関連性の高いものについて解説してきます。
(※2.はそのまま。おそらくLGBTを意識したもの。3.はどちらかと言うと大会運営側の問題で気にしているプレイヤーは少ないと思うので割愛。5.はミックス限定ですが、覚えましょう。)
今日は後半の6、7、8について解説していきます。
コールに対する写真またはビデオの使用方法に関する指示について
アルティメットにもビデオ判定です笑。実は前からあったんですね。
あんまりやることないと思いますが、追加された原則がかなり重要です。
変更箇所⇨B7.1
「WFDFアルティメット公式ルール付帯資料v4.0」の日本語訳v1.0の公表について(SOTG委員会通知 2020-05号)
コート内の選手から質問された場合、結果が自分のチームにとって不利な場合に限り、コート外のメンバーが写真やビデオ映像に基づいてアドバイスを提供することができるようになりました。
これだけみても何のこっちゃですね。ルールブック見てみましょう。
B7.1. 選手は、可能であれば、コールに関する写真やビデオ映像を見てもよい。ただし、この確認のために正当な理由なくプレイを遅らせてはならない。
B7.1.1. いずれかのチームのサイドラインにいるメンバーが写真やビデオ映像等でプレイを記録しており、コールに対するアドバイスを行う場合、そのアドバイスは要求された場合にのみ行うことができる。(A11.1※が適用されない場合に限る)またそのアドバイスによってもたらされる結果がアドバイスを行う側にとって不利になる場合に限る。⇨例としては「アウトオブバウンズだよ〜」って味方が主張する感じ。かなり高いスピリット!要するに「入ってるよ!ほら見て!」って主張はできないってことですね。
※補足
2017年発行WFDFアルティメット公式ルール 付帯資料v4.0
A11.1. プレイが中断している場合、必要であればチームのキャプテン、スピリットキャプテンもしくはコーチは、選手からの依頼無しにプレイングフィールドに入り、自チームの選手にコールを変更(または取り下げ)するようにアドバイスを与えてもよい。ただし、そのアドバイスによるコールがもたらす結果が、自チームが不利となる場合に限る。
「不利な場合に限る」というのがかなり難しいです。
オフェンスの味方がビデオを見せて「ほら見て、アウトだよ」ってパターンなので、かなりスピリット精神が高くないと出来なさそうな行為ですね。
重要なポイントとしては、コールに対するアドバイスは中でプレイしている人から求められた場合のみしかできないことと、外で見ている人やビデオ・写真をとっている人が積極的に外からアドバイスをしないこと(外野から「今のアウトだよ」とか「入ってるよ」とかやんや言わない)と、プレイヤーの中から外の人にアドバイスを求める場合でも自分たちが不利な場合しか認められないという2点です。
ただこの改定だけを見るのではなくこれも前提として第1章に立ち返る必要があります。
1.10 ルールは、直接プレイに関わっていた選手、もしくはそのプレイを最も良く見える位置にいた選手によって判断されるべきで ある。キャプテン以外の選手でない人(フィールドにいる最大14人以外の人)は、ルールの判断に関与すべきではない。ただし、ルールの確認や適切なコールをするために、選手でない人に対して意見を求めることができる。
2017年発行WFDFアルティメット公式ルール
なのでコールが発生した時の流れの前提としては
- まずはプレー当事者同士が議論して判断する
- それでもわからない場合、良く見える位置にいた選手が判断(キャプテン以外の人は口を出さない)
- それでもわからない場合、適切なコールをするために選手でない人に対して意見を求めることができる
B7.1.に関しては上記1〜3を経た上での話であるということです。ルールブックは前半になるほど優先順位が高いので、困ったときはそれよりも優先されるルールがないかを照らし合わせて判断する必要があります。
どうしてもいよいよわかんないから、自分にとっては不利なんだけどビデオ判定してみましょうという流れなのかなと思います。
アウトオブバウンズが怪しくてアドバイスを求める場合にディフェンス側がアウトだと思って外野にアドバイスを求めるのではなくて、オフェンス側が「インとアウト怪しかったんですが、どう見えました?」って聞く感じですかね。
実際のゲームの中でほぼ採用されることがないと思いますが、そうなる前に解決することがベターです。
ファール及びバイオレーションコールが頻繁に発生した場合の対処方法について
これは「「WFDFアルティメット公式ルール付帯資料v4.0」の日本語訳v1.0の公表について(SOTG委員会通知 2020-05号)」には書いていない事項のでこちらで解説します。
該当箇所は「B8. ファール及びバイオレーションコールが頻繁に発生した場合」です。
B8.1. 頻繁にコールが発生している試合では、特に小競り合いが解決しない場合、キャプテン、もしくは競技スタッフは、大会運営者や大会競技規則委員会等に、速やかに状況を知らせなくてはならない。大会運営者、もしくは大会競技規則委員会等 は、チームや選手に対してどのような対応をおこなうべきかを決定する。⇨ここまでは変更なしで以下の「B8.2.」が追記されている
B8.2. 危険なプレイがあるチームによって繰り返し起こっている場合や、悪質かつ危険なプレイが発生した場合、チームキャプテン及びスピリットキャプテンはそれを解決するために議論しなければならない。解決する方法として以下を含む。
・B8.2.1. SOTGタイムアウトの取得。
2017年発行WFDFアルティメット公式ルール 付帯資料v4.0
・B8.2.2. 危険なプレイ減らすための案について議論する。
・B8.2.3. プレイの結果を(仮に他のルールと照らし合わせ矛盾することになっても)変える。
・B8.2.4. 危険なプレイを行ったプレイヤーをその試合でそれ以上プレイさせないこと。
・B8.2.5. 大会ルールスタッフに残りの試合に参加してもらうよう依頼する。
要するにラフプレーを繰り返すひどいプレイヤーがいたら、両チームのキャプテンとスピリットキャプテンが話し合って解決しましょうってことですね。
身体接触禁止はルールの一番最初の「1.1」に書いてあり、アルティメットの試合を円滑にSOTGの良い状態で進めて行くには、その根源的なルールを守れない人は何とかしないといけないです。(参考記事「アルティメットのルールで最初に読むべきページ・第1章について」)
それを両チームでちゃんと話し合ってしかるべき対処を行いましょうって話。
これまでのアルティメットのルールではファール(身体接触)に対するペナルティが特になく、一発退場などもなかったので、そこんところをもっと意識していかないといけないよねってことになります。
レシービングファールについて
最後は「レシービングファール」についてです。(レシービングファールについてはこちらの記事も参考にどうぞ)
おそらく今までもそうだったよねっていう認識のものが「明記」された形の追記事項になります。
変更箇所⇨A7
ブロック後の身体接触に関する「レシービング・ファール」の適用基準
「WFDFアルティメット公式ルール付帯資料v4.0」の日本語訳v1.0の公表について(SOTG委員会通知 2020-05号)
変更点
ディスクの所有権が決定された後に発生した接触は「レシービング・ファール」や「オフセッティング・ファール(ファールの相殺)」の根拠にはならないと明記されました。
付帯資料を見てみましょう。
A7. レシービングファールについて
A7.1. 以下のルールはルール本紙の 17.2、17.6、17.10を補足するものである。(それぞれ⇨ディフェンシブ・レシービング・ファール、オフェンシブ・レシービング・ファール、ファールの相殺)
A7.2. 明らかにディスクの所有権が確定した後(後述あり)に発生した腕や手への接触は、ディフェンシブ、もしくはオフェンシブレシービングファールをコールする根拠とならない。
(もちろん、全てのプレイヤーは身体接触を避けなければならない。) (ルール本紙 17.5記載のストリップファールに該当する場合を除く)A7.3. オフセッティングファール(ルール本紙17.10記載) がディスクの所有権が明らかに確定した後に発生した場合、プレイとは直接関係のないファールとして扱われる。
A7.4. A7.2 およびA7.3に関する注意事項
A7.4.1. 明らかに所有権が確定した場合とは、ディスクがキャッチされた場合(ディフェンスがカットしてキャッチした場合も含まれます)や、身体接触がその後のプレイに影響を及ぼさず、ターンオーバーが発生することが明確である(ファールがあろうがなかろうがターンオーバーになりそうなやつ)場合である。⇨この改定はここをしっかり理解する必要がある。
A7.4.2. ルール本紙17.1にしたがい、デンジャラスプレイに対するコールは A7.2 と A7.3よりも優先される。(何よりも危険なプレーはしないでくださいってことで、そもそも身体接触しないように意識してプレーすることが大事。)
2017年発行WFDFアルティメット公式ルール 付帯資料v4.0
正直言って難解です笑。補足解説を入れすぎたかもしれません💦
わかるようなわからないようなアルティメットのルールを読んでいてよく陥るやつです。
具体的なシーンを思い浮かべて考えてみるといいかもしれません。
「A7. レシービングファールについて」が起こりうるシーン
この二つの「明らかに所有権が確定した場合」というシーンは例えばシュートレシーブのシーンで考えてみると分かり易いかもしれません。
「ディスクがキャッチされた場合」
オフェンス側がシュートを打つ
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オフェンス(レシーバー)とディフェンダーがシュートを追いかけて上競り合いになる
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ディフェンダーがキャッチしてカットする(ここまで身体接触は無し)
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あろうことかディフェンダーがキャッチした後に勢い余ってオフェンスの顔面に腕がぶつかってしまう(身体接触発生)
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この場合にオフェンス側が「ディフェンシブ・レシービング・ファール」をコールすることはできない。
こんな感じかと思います。キャッチした後だから、主張できない。
ただし、公式ルール12.2に「選手が地面、チームメイト、もしくは適切にディフェンスしている相手チームの選手との身体接触によりディスクのコントロー ルを失った場合、そのキャッチは無効となる。」とあるため、上記の腕が当たったタイミングが着地後なのかどうかがディスク所有権確定のタイミングを判断する上で重要なポイントと言える
オフェンスがキャッチしたパターンよりもディフェンスがキャッチしてカットした後の話題に上がりそうですね。
どっちにしてもぶつかってしまったら、一旦プレーを止めて「ごめんね」ぐらいあった方が良さそうな気はします。顔面痛いし。
「ターンオーバーが発生することが明確な場合」
オフェンス側がシュートを打つ
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オフェンス(レシーバー)とそのレシーバーに対するディフェンダーがディスクに向かってプレーする(当然レシーバーは必死にシュートを取りに行くし、ディフェンダーもカットを狙いに行く。)
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この時レシーバーとディフェンダーが接触して、このどちらかが「レシービング・ファール」を主張する(多いのはレシーバーの足にディフェンダーの足が引っかかってこけちゃうとか)
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でもよくよくシュートを見てみると、コート外に飛んでいたりそもそも低空飛行していて「誰がどう見ても取れないよね」という状況であった。⇨ターンオーバー発生が明確
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どちらの「レシービング・ファール」もコールできない
オフェンスがスローミスやキャッチミスをしていて、どっちにしても取れなかったよねってパターンのやつです。
他にあるあるパターンとして
完全なるキャッチミスしているのに、キャッチミス後に身体接触があった場合オフェンスから「レシービング・ファールだ!」と後付けで言うことも出来ないです。(そもそもダメです・・自分に正直にプレイすべきとこれも第1章にある)
この辺は難しいので私ももう少し勉強します。
まとめ
以上今回の2020年WFDFアルティメット公式ルールの変更点(後編)についてまとめてみました。
全体的に言えるのは、身体接触への厳しさを見直そうといった意図の感じられるルール変更だと思います。
先述しましたがルール第1章の最初の最初に「身体接触禁止」とあります。SOTGの評価項目にもありますので、アルティメットをする際は身体接触を避けてプレイしましょう。
昨日から引き続き今回のルール改定について記事を書きましたが、人によって想像できる場面は違います。その中で「こんな時はどうなるの?」という疑問も浮かんでくると思いますのでそんな時は、ゲームアドバイザーやルールをよく理解している人に聞いて議論してみましょう。
そうすることで少しずつ自身のルール理解度は高まっていくはずです。いきなり完璧に覚えるなんて不可能なので、少しずつ覚えていきましょう。
今回の二つの記事でみなさんのルールの理解が少しでも深まれば嬉しいです。
というわけで今日はこの辺で。
ではまた。