アルティメットの歴史から紐解く日本のSOTGへの高まりについて

ルール・SOTG
この記事を書いた人
能勢 雷人

大阪体育大学BOUHSEARS(2007~2010)〜文化シヤッターBuzzBullets(2011~2022)〜Bustar
ポジション:ハンドラー
日本代表歴:2010WU23UC、2011,2015,AOUC、2012,2016,WUGC、2024WMUC
埼玉県フライングディスク協会事務局長
JFDA公認ゲームアドバイザー
U.C.ABLAZERS(ユースチーム)創設

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こんにちは、バズバレッツの雷人です。

本日は「アルティメットの歴史から紐解く日本のSOTGへの高まりについて」というテーマで、近年日本のSOTGへの意識の高まりについて解説していきます。

この記事を読むことで、なぜ今日本でこんなにも「SOTG」という言葉が重要視されるようになってきたのかがおわかりいただけるかと思います。

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アルティメットの歴史から紐解く日本のSOTGへの高まりについて

最近の大学生の中では、「SOTGを意識することが当たり前」と思っている方もいらっしゃるかと思いますが、SOTGがこれほど日本で意識されるようになったのは実はごく最近の出来事です。

それまでの日本のアルティメットでは、バズバレッツを含めそこまでSOTGに対して重要視していなかったように思います。

SOTGへの高まりが最近始まったということは世界的に見ても同じようなことが言えて、世界基準でみれば2012年から2013年ぐらいの間でSOTGへの意識が変わっています。

一つ確かなことは「日本が世界のSOTGへの意識の変化に気づかずに遅れをとってしまった」ということです。

それではSOTGの高まりの歴史について解説していきましょう。

2012WUGCでのオープン部門「日本vsカナダ」

まず、世界的にSOTGの重要性が注目されるようになったきっかけとなった試合があります。

それが2012年に日本で行われた国別選手権・WUGC(世界アルティメット&ガッツ選手権大会)でのオープン部門の「日本vsカナダ」の試合です。

この試合はパワープール(ニ次リーグ)の確か最終戦で、勝った方がトーナメントで強豪アメリカと逆山に入れるという大事な試合でした。当時のランキングからするとおそらく勝った方が決勝戦に駒を進められるといったような状況で、準決勝クラスの試合になっていました。

当然日本としてはホームで結果を出したいので勝ちに行く試合ですし、もちろんカナダとしてもここ一番の重要な試合ということで両チームのボルテージはMAXの状態でした。

そして事件は試合中に起きました。

とてもじゃないけどアルティメットの試合とは思えないほどのラフプレーをカナダ選手が繰り返し行ってきました。それを誘発したのは日本の選手の態度にあったであろうことは否定できません。

しかしそれ以上に両チームともに(特にカナダの方が)「勝利至上主義」の中で試合を進めていたように思います。(ちなみに後日この試合についてカナダのある選手から、謝罪と日本にも改善して欲しい点を述べた手紙が届いています)

ライブ配信により世界中に観られるようになった

この試合の映像はYouTubeでライブ配信されて、現在でも残っています。

まだYouTube上に残っているので、気になる方は検索して探して見てください。ただ、あまり冷静に良い気持ちで見ることができないの試合なのでオススメはしません。

30分も得点が入らない異常な事態を切り取った動画もあります。

近年では当たり前のライブ配信もまだこの頃は始まったばかりでした。ともあれこの試合は世界に配信され世界中に視聴されていると思われます。

世界的にSOTGへの意識が変わっていく

この試合が世界のSOTGへの意識に影響を与えたことは言うまでもありません。

実際にゲームアドバイザーの世界的な集まりにおいて、この試合をピックアップして議論されたと聞いており、ここから世界でもSOTGに対する取り組みが加速したと聞いています。

そしてもう一つ翌年にある出来事がおきました。

2013WorldGamesでのIOC視察

2013年にコロンビアで行われたワールドゲームズのアルティメットの試合をIOC(国際オリンピック委員会)の方が視察に来たそうです。

ワールドゲームズはご存知の通り、オリンピック競技にしたいスポーツが集まっている、いわば準オリンピックみたいなものです。

IOCが視察した試合で、コールが多発し試合が止まってしまう事態がおきてしまい、IOC側が「なんだこの競技は?」と不満を漏らしたのです。(聞いた話ですが)

せっかくのオリンピックへのアピールチャンスだったのに、あまり良い印象を与えられなかった試合となってしまいました。

オリンピックを目指す上でのルール改定

その数年後、多くのルール改定がありました。

その中でも目立ったのは「時間を短縮するようなルール改定」です。

例えば「投げていないトラベルの場合他のプレイヤーは止まらない」や「ターンオーバー後のリスタートまでの時間が定めた」などといった形で時間短縮するような改定がありました。

当然観ていて「しょっちゅう試合がストップする」なんてことは観客からしたら不満が出ます。そもそも、「なぜ止まっているのかわからない」のがアルティメットをやっていない人が試合を見た場合感じるところです。

そういった理由もあって「より観てもらうためのルール改定」が行われたと感じています。

5年間世界に遅れをとった日本

2012年、2013年とそのようなことが起きて世界的にSOTGへの意識が変わっていく中、日本は明らかに世界に遅れをとりました。

その原因は間違いなくバズを含めたトップチームにあると思います。

トップチーム以外の社会人チームや大学生以下チームはトップチームの試合をよく観ているし、プレーを含めいろんなことを参考にしています。

日本のトップチームは世界の意識が変わっていることに気づかずに、今まで通りの意識のままで5年間を過ごしてしまったように思います。

2018年WU24UCでの酷評

SOTGについて特に大きな動きのなかった日本に対して、世界の目が向き始めたのが2018年1月にオーストラリアのパースで行われたWU24UC(世界U24アルティメット選手権大会)でした。

良い見本であるべきトップチームからの学びのなかった、U24以下(つまり大学生以下)のSOTGが世界基準で見ると著しく低い評価を受けたのです。

現地にゲームアドバイザーとして参加していた方は、世界のトップのゲームアドバイザーからお叱りを受けたようです。

具体的な話は割愛させていただきますが、この大会の日本チームのSOTGスコアはかなり低かったと聞いています。

2018年から日本国内でも力を入れ始める

2018WU24UCを受けて日本のゲームアドバイザー陣は「このままではまずい」と言うことで、その年の全日本選手権からSOTGへの意識を変えるべく動き出しました。

全日本選手権の地区予選で各チーム代表者を集めてミーティングを行い、パースで起きたことを伝えSOTGの大切さを改めて伝えました。

私がスピリットキャプテンになったのもこのことが影響しています。(それまではバズにもスピリットキャプテンはいませんでした。)

組織的に変わったこと

具体的にはゲームアドバイザーの増員をして各大会の本戦以上の試合に配置したり、スピリットディレクターやSOTG委員会の配置をしたりしてJFDAとしても組織として力を入れ始めました。

私自身も昨年ゲームアドバイザーの資格を取得して、数回試合のアドバイザーを行いました。

日本でも世界に追いつくべく、ここ数年で目まぐるしくSOTGへの意識が変わっていったと思います。

まだまだこれから良くなる

ゲームアドバイザー側に属するようになって、内部の話も聞けるようになりました。

求める理想は高いですが、個人的には日本はまだ「変わり始め」だと思っています。

確実に良くなっていることは明らかなので、焦らず一つずつ課題をクリアして行けば良いかなと思います。

各自のルール理解が大事

国内のSOTGへの意識を高めようと言っていますが、最終的なところは各自のルール理解がすごく重要なウェイトを占めています。

「先輩に教わったから」ではなくしっかりと”自分自身で”ルールブックを読んでわからないところは、聞いたりして理解していくことが必要です。(先輩も悪気なく間違えて覚えている場合があります)

私も10年以上経った今でもすぐに答えられないルールがあるので大丈夫です。少しずつ覚えて行きましょう。

まとめ

と言うわけで、近年日本のSOTGへの意識が高まっていることを歴史を遡って説明していきました。とは言っても日本の意識が変わり始めたのはまだまだ最近の話でこれからまだ良くなると思います。

各自がルールを理解しSOTGを意識して試合を行えば、日本国内での試合がもっと気持ちの良い試合になるはずです。

しかし、SOTGを意識するあまり「戦う気持ち」を忘れないようにしてください。絶対に何をしてでも勝ってやると言うことではなく、お互いに相手を「リスペクト」した上で、勝ちにいきましょう

SOTGを変に理解してしまって”馴れ合いの精神”が強くなってしまうと、世界で勝てなくなってしまいます。(結構心配です)

その辺の線引きは悩むところもあるかもしれませんが、チームによって目標も違うと思うのでうまく各チームで話し合ってください。

私もトップチームのスピリットキャプテンとして大学生やユース世代のお手本となるように気をつけます。

と言うわけで今日はこの辺で。

ではまた。